【京都間借り事情】スパイスカレーizonが間借り8か月で実店舗を持つまで(後編)

【京都間借り事情】スパイスカレーizonが間借り8か月で実店舗を持つまで(後編)

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間借りカレー屋「スパイスカレーizon」が実店舗を持つまでのリアル。後編です。

前編はこちらから

忙しくて前編を読めない方向けにざっくりまとめると。

  • 2022年1月「スパイスカレーizon」オープン
  • 元々やっていた古着屋と並行して頑張ってみるも赤字
  • 状況を打破するために創作カレーを始めるも改善できず

という状況で4月を迎えます。

現実の収支や残りの貯金額などを踏まえると、あと2~3か月やってみて、ダメだったら閉店するしかない状況でした。

後編は、赤字だった間借りカレー屋が、黒字になって実店舗を持つまでの間に改善したところを中心にお届けします。

【改善点1 「世界一周カレー」スタート】

  • 「今回は旅行先で」
  • 「今回は旬の食材で」
  • 「今回は時事ニュースで」

上記のように、創作カレーのテーマ選び方が毎回違うと、お客さんにも伝わりづらいのではないかと考えて、テーマの選び方を統一することにしました。

世界のどこかの国をテーマにカレーを創作する「世界一周カレー」をスタート。

民族、移民、歴史、時事ニュース、食文化、など、アイデアの出どころは毎回違いますが、カレーの名前に国名を入れることで、キャッチーな印象を目指しました。

イタリアカレーからスタートし、週替わりでテーマとなる国を変えることに。

【改善点2 マーケティング戦略】

ブランディング

「世界をテーマにカレーを作ってるんです!」

と打ち出したところで、それが集客につながるかは全く不明でしたので、万人にわかりやすく伝えるにはどうすればいいか戦略を練りました。

色々本を読みましたが、いちばん参考になった書籍がこちら。

The Art of Marketingマーケティングの技法―パーセプションフロー・モデル全解説

すべてはベネフィット(顧客利益)のために、マーケティングを設計・実践していく指南書。ブランディングや実際の運用に使用するテンプレートは「スパイスカレーizon」のような間借りカレー屋にも当てはまる、非常に使いやすいものでした。

パーセプション・フローのブランディングモデルに基づいて、

「izonのカレーは歴史や文化を食べるアートであり、新しい食体験ができる」

というベネフィット(顧客利益)を設定しました。

マーケティング

パーセプション・フローを参考にしつつ、実際にお店に足を運んでもらうことを目的に、インスタグラムをの運用をスタート。izonの投稿をスマホでみた時に、来店に向けて心が動くような投稿を心がけました。

メリットの押しつけは、どんな人にも興味を持たれませんが、顧客利益の提案は、関係性のない人にも刺さるのです。

当時のインスタグラムのアルゴリズムも追い風になり、この取り組みは成功しました。

当時のインスタ運用

当時のインスタグラムは、

  1. 「映え」ているごはんの写真が優遇されていた
  2. インスタで飲食店を探す人が多かった
  3. ハッシュタグが重要な要素だった

という感じで、写真と文章だけの投稿でも、質さえよければ、たくさんのリーチが期待できる状況にありました。

カレーの美しさにこだわり、ハッシュタグを厳選し、文章にはワンプレートの創意やストーリーを記載した上で「実際に来店して食べてほしい」というメッセージを明確に打ち出し、リーチを伸ばすことに成功。

2022年4月時点では500人ほどだったフォロワーも、6月には1500人を超えました。

状況を数字で把握

リーチが伸びているということは、知らない人が投稿を見ている、ということ。

無関心→認知→興味→来店決意

投稿を見た人の心は、この太字のどこかにあり、→を右へ進めることができれば来客数が増えるということになります。

投稿を見た人の心を水瓶に例えて、「丁寧に水を汲み続ければ、かならず水は溢れる」(→が右へ進む)イメージで、なるべく毎日の投稿を心がけました。

投稿の結びの文言は来店を促すものでしたが、店側の利益ではなくベネフィット(顧客利益)を追求していたので、「リーチ数と来店数は比例する」と仮定し、毎日の新規顧客数を数えることに。

その結果、リーチ数が増えると新規顧客数が増えることがわかり、仮定はある程度正しいのだと自信が持てました。

【間借りカレーを真面目に頑張った結果】

赤字から黒字へ 時系列でざっくりこんな感じ

  • 4月→赤字
  • 5月→赤字
  • 6月→損益分岐
  • 7月→黒字
  • 8月→黒字

古着屋は閉店することに

間借りカレーの来客数は多い日で20名まで伸び、ようやく利益が見込めるところまで改善しました。

これが、7月の中頃くらいです。 

よかったよかった、と喜んでいましたが、二足の草鞋で同時進行するはずだった古着屋の業務には時間を割けなくなり、開店休業状態に。

当時の世界一周カレーは、テーマとなる国を毎週変えていました。その度に、新しいカレーを2~3種と新しい副菜を4~6種ほど創作していましたので、それ以外の作業は出来なくなってしまったのです。

カレーに全てを捧げてギリギリ成立する日々。

創作カレーと古着屋の両立は不可能と判断し、古着屋の閉店を決意します。

お客さんが増えたからとはいえ、間借りであることに変わりはない

利益が出始めたといっても、間借りは間借り。

前編でも簡単に解説した通り、間借りという営業形態が、いつ終わるやもしれない不安定な状況であることに変わりはありません。

それでも、ようやく軌道に乗り始めた事業ですから、まずは1年間継続できるかチャレンジし、1年経っても黒字でやれているなら、実店舗を検討する、という次なる目標を立てました。

そんなある日のこと

昔お世話になった方から、「カレー屋さんのテナントに空きが出るから、入らない?」という連絡が入ります。

このテナントが、現在の「スパイス料理店izon」であり、旧「naturemian spice curry」です。

naturemian spice curryは行列のできる人気のカレー店でしたが、オーナー様が体調崩され、志半ばで閉店を決断された状況でした。次に営業するお店を探されていることを教えて下さった方がいたのです。

2回の面談を経て、テナントを借りることに決めました。

4月からの数か月で赤字から黒字へ転換できた実績も自信になりましたし、1年後だろうが、今すぐだろうが、新しい店舗にお客さんを呼ぶという点ではやることは同じです。

ただし、契約するのは最大20席ほどの店舗。間借りに比べて月々の固定費がかなり大きくなるので、うまくいくかどうかは全くわかりませんでしたが、挑戦してみることにしました。

開店準備

急な決定でしたので、当時の間借り先には大変申し訳なかったのですが、8月いっぱいで間借りを卒業することをお伝えし、9月は夜営業のメニュー開発などの準備期間に充て、10月1日に実店舗をオープンしました。

naturemianさんの内装や設備をそのまま引き継ぐことができたので、物理的な開店準備といえば、ステンレスのお皿を持っていったくらいです。

【これから間借りする人へ】

スパイスカレーizonの反省点

  1. 開店することを家族と相談しなかった
  2. 何事もひとりでなんとかしようとした
  3. どうやって集客するか深く検討していなかった
  4. お客さんにカレーの内容を説明していなかった
  5. ひとつひとつの作業を工数として計算しなかった
  6. 行き当たりばったりで計画性がなかった

こんな感じです。

よく成立したな、と思いませんか?

これを見てそう思ったあなたは、間借りで何かを始めて失敗するリスクがかなり減っています。これと逆のことをコツコツやればよいのです。

反省点から導かれるやった方がいいこと

  1. まずは家族にちゃんと相談する
  2. 力を貸してくれそうな人に協力を仰ぐ
  3. 現実的な集客についてちゃんと検討し実践する
  4. お客さんに対して商品をわかりやすく伝える努力をする
  5. 工数を管理し、睡眠時間を確保する
  6. 無理のない事業計画を立て、PDCAサイクルを回していく

どうでしょうか。

急にまともな人になったのではないでしょうか。

これらを実践すれば、成功した時には再現性のある貴重な経験になりますし、たとえうまくいかなかったとしても、次にチャレンジする時の糧にすることができます。

SNSでバズりたいなあ、などと安易なことを考えてはいけません。

SNSを意図的にバズらせるには、勉強と努力が必要ですし、各SNSプラットフォームのアルゴリズムは定期的に更新されますので、その都度、アルゴリズムに合わせたコンテンツ作りをしなければなりません。(それを楽しんでできる人なら問題ないと思います)

SNSはあくまで、コツコツ集客するためのツールのひとつだと認識した方がいいでしょう。

【まとめ】

間借りは、貸主と借主の信頼関係だけで成立する不安定な営業形態です。

借主のメリットとして言い換えれば、「人脈さえあればすぐに始めることができる」「撤退しやすい」ともいえます。

このメリットが生かして、まずは黒字を目指すところから始めてみて、無理そうだったら、趣味の範囲で継続するとか、撤退してもう一度計画を練り直すのがいいのではないでしょうか。

費用面ではやや割高になりますが、数時間や1日単位で契約できるレンタルスペースやレンタルキッチンという選択肢もありますので、とりあえず何かを始めたい場合にはそちらも併せて検討してみるのがいいでしょう。

何かご質問などありましたら、お気軽にコメントして頂ければお答えします。

どうせ間借りするなら、失敗したくないですよね。

金銭的にも精神的にも追い詰められ、「競馬で万馬券当てるしかない」と、当時は本気で考えたスパイスカレーizonも、現在はデザイナーさんにTシャツを作ってもらったりデッドストックのミリタリーにロゴを入れたり、また新しいことにもチャレンジできるまでになりました。

ぜひ、izon storeものぞいて頂けると嬉しいです。店舗でも販売してますので、お気軽にお問い合わせください。

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